資本逃避 capital flight


capital flight  資本逃避。資本逃避と海外への資本移動とはどこが違うのか。両者は形式的には海外に資金が流出する同じ現象を指している。資本逃避とは個人であれ企業であれ、資本が元来の所有名義人や国籍を捨てて、国家の規制や統制から逃れようとする動きを指すものではないか。
 法人でも個人でもよいが、皆ある国籍(母国)に属して、資金を動かしている。ただそれは母国による、課税を含めた規制、統制さらには監視のもとにあるのと同義である。しかしもし、ほかの国籍の法人あるいは個人の名義の口座に自身の資金を移して(名義人を変えて)、かつ、この資金へのコントロール権を維持できれば、事実上、母国の規制や統制、さらには監視の目を逃れた自由なお金を生み出すことができる。
 母国での通貨の切り下げ、金利の引き下げなどを契機として、海外への資本流出が生じることがある。これはただちに資本逃避とは言えないのではないか。というのはそれは一時的であって、また母国に戻る、そういう短期的な動きかもしれない。加えて、そのお金の名義人が変わっていないとすれば、そのお金の動きは母国によって、捕捉され監視されている。これはまだ資本逃避とはいえないのではないか。
 一般に行われている議論では、海外への資本移動すべてを広く資本逃避と呼んでいる場合があるが、資本逃避は、元来の名義や国籍を離脱することにより国家の統制やさらには監視からも逃れようととする資本の動きに限定すべきではないか?
 以下の中国経済用語「資金外逃」が説明するように、租税回避地に受け皿になる法人を設立して、その口座に、資金を動かすことで(母国政府による課税や監視を回避しつつ)、実質的にコントロールをすることが可能になる。こうしたものが、本来の資本逃避ではなかろうか。

 資金外逃 中国経済用語
   資本逃避 マクロード

    autism   Baumol's cost disease   bulimia   bullshit job capital flight 
      China as a dystopia  choke point   coffee and urinary stone
  dementia   digital Leninism   hysteresis inclusive marketing 
  infection disease interstitial pneumonia  job type employment  
  market Leninism   menopause  osteoarthritis  peer pressure
      presbyopia  schizophrenia subarachnoid hemorrhage 
  US-China decoupling Z-generation  


チョークポイント choke point


 choke point  chokeとは相手を窒息させること。choke pointは窒息状態になる所を意味する。地政学では、そこを抑えられると、物流の死命を制せられたのと同じになるような海峡をchoke pointということがある。

 海峡以外がチョークポイントとされることもある。典型は、2020年に表面化した米国によるファーウェイ排除の動き(そのため米国はまず米国製半導体技術がファーウエイに供与されることを禁止した)である。排除の動きはその後、調達禁止から販売禁止に進んだ。これはファーウェイが次世代通信規格で優位に立つことに、米国が危機感を高めたからとされる。この場合は、次世代通信規格が米国のチョークポイントだった。
 その後の事例としては、2022年2月から米国がロシアに対する半導体輸出を許可制として原則禁止にしたこと。あるいは中国が2023年8月から、(半導体生産に不可欠とされる)レアメタル(希少金属)であるガリウム、ゲルマニウムの輸出管理を厳格化したこと。これはそれぞれ、チョークポイントである半導体の生産あるいは供給に関して、米国あるいは中国が、有利なポジションを取ろうとする行為だった。
    事業者にとってこの問題は、サプライチェーンのチョークポイントが利用できなくなると、システム全体が機能しなくなるリスクとして現れる。事業者としては、サプライチェーンのチョークポイントがどこかを認識し、チェーンの途絶といったリスクを低める対策(代替品、代替ルートなどの事前確保など)が必要である。
   なおchoke pointによく似た言葉にbottle neckがある。こちらは瓶でいえば首のところ、地形的にいえば狭まったところを意味し、経営管理上は生産・流通・販売などにおける、制約要因、阻害要因を意味する。事業者にとりbottle neckは、それを認識し、いかに解消するかが課題になる。

    Choke Points Harvard Business Review Jan./Feb.2020

    autism   Baumol's cost disease   bulimia   bullshit job capital flight 
      China as a dystopia  choke point   coffee and urinary stone
  dementia   digital Leninism   hysteresis inclusive marketing 
  infection disease interstitial pneumonia  job type employment  
  market Leninism   menopause  osteoarthritis  peer pressure
      presbyopia  schizophrenia subarachnoid hemorrhage 
  US-China decoupling Z-generation  


履歴効果 hysteresis


  hysteresis ヒステリシス 履歴効果 ある経済イベントの衝撃が、その後、情況が変わっても、履歴として経済効果を与え続けること。たとえば、深刻な経済不況の後、景気が回復しても、失業率がなかなか回復しないといった状況のとき、ヒステリシス(正しい発音はヒステリーシス)、履歴効果が働いているからだと指摘される。ではその理由はどこにあるだろうか。
 ヒステリーシスの議論では、失業が長引くと、①失業した人の技能が低下することで、あるいは②勤労意欲が低下することで、その後、景気が回復しても、失業率の回復がなかなか始まらない(あるいは生産性が回復しない)とする。この議論は、不況の長期化を説明するとき、不況という打撃により、①失業により人的資本が技能が低下するなど毀損する、②低い賃金に生活を合わせ賃上げ要求が出にくくなる、③人々が消費に抑制的になり消費拡大が生じなくなる、④企業が研究開発投資や設備投資の消極的になる、などから潜在的成長率自体が低下し不況が長期化するのは、まさに不況という打撃によるヒステリーシスが、働いているからだとする。
 よく似たニュアンスの言葉に経路依存性path dependency)がある。こちらは、制度や仕組みについては過去にそれを採用する決定が行われたわけだが、情況が変わっても、過去に出来た制度や仕組みがなかなか変更されないときに、使う。すなわち、新たな制度に変更しようとするとき、慣れている現在の制度や仕組みをどうするかという議論になるが、それはまさに経路依存性をどうするか、が問われていることになる。ヒステリーシスが、何か強い衝撃があと迄続く効果を及ぼすことを指しているのに対し、一度確立した制度や仕組みが、なかなか変わらないことを指している。

    autism   Baumol's cost disease   bullshit job capital flight 
      China as a dystopia  choke point   coffee and urinary stone
  dementia   digital Leninism   hysteresis inclusive marketing 
  interstitial pneumonia  job type employment  
  market Leninism   menopause  osteoarthritis  peer pressure
      presbyopia  schizophrenia subarachnoid hemorrhage 
  US-China decoupling Z-generation  

ブルシットジョブ bullshit job


 bullshit job 世の中には高給だが、本人も無意味だと思っている仕事がある。「どうでもいい仕事」bullshit jobがある。哲学者の故デヴィッド・グレーバーの言い方であり、同名のその著作はかなり話題になった。日本ではそれがちょうど、コロナ禍で医療従事者などエッセンシャルワーカーが注目された時と重なった。
 エッセンシャルワーカーが重要な仕事をこなしているのに、経済的に恵まれていないこととの対比でbullshit jobが注目された。
 ブルシットジョブの話は私には少し落とし穴があるように思った。そもそもここでどうでもいい、というのはグレーバー個人の価値判断によるもの。そこにグレーバーには無駄に見えても、ほかの人に取り大事なものがあるかもしれない。またbullshit jobの中の賃金は様々だと思う。またエッセンシャルワーカーの多くが経済的に十分報酬を得ていないとしてもこちらにも高給取りがおり、賃金は様々だと思う。
 bullshit jobの議論は、自分の仕事の社会的意義に自信が持てない人々の自己卑下の気持ちにフィットして広がったように思う。
 この議論には、エッセンシャルワーカーに経済的に恵まれない人が多くいることが、この資本主義社会の矛盾の表れでないかという問題提起が含まれているように思う。介護職の人たちが典型で、その状態を正すべきだことは賛成だ。ただbullshitが高給で、エッセンシャルが薄給かは一概にいえない。またbullshitが社会的にも意味がないことかは、詳しく見ないと断言できない。少し丁寧な議論が必要だ。 

 新井建一「クソどうでもいい仕事の本質を考える」2020/10/20 はグレーバーの定義を詳しく紹介している。
 エッセンシャルワーカーとは 社会インフラを支える人々という言い方が良いと思うが定まった定義がない。非常時にも出勤を求められる人々だともいえる。

      autism   Baumol's cost disease   bullshit job capital flight 
      China as a dystopia  choke point   coffee and urinary stone
  dementia   digital Leninism   hysteresis inclusive marketing 
  interstitial pneumonia  job type employment  
  market Leninism   menopause  osteoarthritis  peer pressure
      presbyopia  schizophrenia subarachnoid hemorrhage 
  US-China decoupling Z-generation  


Turn Around and Saburo Ota's Major Writings

Turn Around and Saburo Ota's Major Writings

Jack Ma How I overcame failure


 Steve Jobs  Why I dropped out of college


倒産する可能性のある会社の見極め スガワラくん 2023/08/23


 企業再生の方法 5選 コンサルティングチャネル 2021/12/31


 Turn Around(再生支援事例集) No.3 日本政策金融公庫JFC 2024/01

 
企業再生とは M&A Capital Partners 2023/12/27更新

 企業再生とは 解説 前田樹監修 M&A Succeed 2023/11/08更新 

 事業再生・企業再生の手法のまとめ AGS media 2021/12/21

 企業再生の成功事例 日本航空 カネボウ ダイエー The Owner 2020/04/23

 企業経営改善の取組み成功事例 日本政策金融公庫経営情報392 2014/01/30

 再生案件事例集 企業再生支援機構REVIC H24(2012)/11

 Turn Around Recovery Strategy CFI

 財務管理論講義パワーポイント第12回 崩壊の予兆 turn around戦略

.................................................................................................................

太田三郎氏の著述。1948年生まれ。企業の倒産と再生を研究。現在、千葉商科大学客員教授、政治経済研究所理事。

太田三郎 wikipedia
J-Global 太田三郎

論説 倒産しても再チャレンジできる文化こそ、社会の活力を高める 中小企業支援研究 別冊6 2019/09  1

寄稿 千葉商科大学90周年(2018)に向けて  



共編著 経営財務の情報分析 学文社 2015/04

共編著 大震災後に考えるーリスク管理とディスクロージャー 同文舘出版 2013/03

共編著 企業統治と経営行動 文眞堂 2012/09

単著 倒産・再生のリスクマネジメント―企業の持続型再生条件を探る 同文舘出版 2009/08

単著 企業の倒産と再生 同文舘出版 2004/07












注目の投稿

Classics of Economics REFERENCE: 1848-2023

The Young Karl Marx (2018) trailer Classics of Economics  REFERENCE: 1848-2023 John Locke 1634-1704     John Locke (2) David Hume 1711-1776 ...

人気の投稿