hysteresis ヒステリシス 履歴効果 ある経済イベントの衝撃が、その後、情況が変わっても、履歴として経済効果を与え続けること。たとえば、深刻な経済不況の後、景気が回復しても、失業率がなかなか回復しないといった状況のとき、ヒステリシス(正しい発音はヒステリーシス)、履歴効果が働いているからだと指摘される。ではその理由はどこにあるだろうか。
ヒステリーシスの議論では、失業が長引くと、①失業した人の技能が低下することで、あるいは②勤労意欲が低下することで、その後、景気が回復しても、失業率の回復がなかなか始まらない(あるいは生産性が回復しない)とする。この議論は、不況の長期化を説明するとき、不況という打撃により、①失業により人的資本が技能が低下するなど毀損する、②低い賃金に生活を合わせ賃上げ要求が出にくくなる、③人々が消費に抑制的になり消費拡大が生じなくなる、④企業が研究開発投資や設備投資の消極的になる、などから潜在的成長率自体が低下し不況が長期化するのは、まさに不況という打撃によるヒステリーシスが、働いているからだとする。
よく似たニュアンスの言葉に経路依存性(path dependency)がある。こちらは、制度や仕組みについては過去にそれを採用する決定が行われたわけだが、情況が変わっても、過去に出来た制度や仕組みがなかなか変更されないときに、使う。すなわち、新たな制度に変更しようとするとき、慣れている現在の制度や仕組みをどうするかという議論になるが、それはまさに経路依存性をどうするか、が問われていることになる。ヒステリーシスが、何か強い衝撃があと迄続く効果を及ぼすことを指しているのに対し、一度確立した制度や仕組みが、なかなか変わらないことを指している。
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