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米中デカプリング US-China decoupling


US-China decoupling:米中ディカプリング。まずカプリングcouplingは結合という意味。その行為或いは部品を指す。Decouplingはその逆なので分離という意味。米中両国の貿易戦争が過熱する中、相手国からの輸入を制限から進んで禁止に至れば、過度な依存状態の修正(貿易摩擦trade friction)から進んで分離:US-China Decouplingを志向する段階に進んだと言える。両国の貿易依存関係の深さから、分離に至ることはないという解説がしばしばなされたこともある。しかしこれは台湾有事はない、と断言することと同じ、希望をのべているだけではないか。
 背景にある問題は、中国の経済発展が進めば、民主的な国になるという仮説(リプセット仮説Lipset Hypothesis, Seymon Martin Lipset 1922-2006)の崩壊である。実際には経済発展にもかかわらず、中国の民主化は進まなかった。あるいは独裁的な国で経済成長が生じた(開発独裁:development dictatorship)。むしろ習近平のもとで、個人的な独裁体制は強化されたと思える。その独裁体制で国内を締め付けるとともに、香港における民主主義を力で弾圧した中国は、今、台湾を脅かしている。リプセットの仮説は、中国の取引を拡大したい資本家経営者に都合が良かった。今は中国の政治の矛盾に芽をつむろう。しかし長いスパンでみれば、中国との経済交流拡大は中国の民主化につながると。しかし実際にはそうならなかった。

 共同富裕社会の実現
 中国政治の民主化
 非民主主義的政権は経済活動にとってどのような問題があるのか。行政の腐敗。社会のルールの透明性も問題もある。突然の方針の変更や刑罰・罰金などを科されるリスク。政治が不安定化するリスクなども考えられる。
 我々にとっては、この問題は中国リスクを高める。中国リスクを引き下げようとする動きは日本と中国のDecouplingを進めることとが二重写しに見える。
 中国上海で起きたロックダウン(2022年3月末~5月末)によるサプライチェーン途絶は、多くの日本企業が脱中国を模索するきっかけになった。2023年3月、日本の製薬会社幹部が、中国で反スパイ法容疑で拘束されたことも衝撃を与えた。すでに反スパイ法容疑で逮捕された日本人は14名に及ぶとされる。中国進出が危険と隣り合わせだということを、日本企業は認識すべきではないか。
 非民主主義国家、中国と国際社会はどう向き合うべきか。さまざまな中国リスクを警戒して、現在以上に中国と交流を深めることは避けようというのは、一つの方向性である。事実、対中国投資が広範囲に抑えられている(投資規模の縮小、新規投資の回避など)。この投資が清算・撤退に至れば、それは分離という段階だといえる。
 距離的に近い中国という巨大市場のメリットを考えて、なお中国投資を拡大するという選択を否定しているわけではない。しかしリスクの大きさとメリットとを、十分比較考量することが経営者には求められる。

 外国企業へのリスク増大 中国改正スパイ法、米当局が警告 Reuters 2023年7月1日
   米中デカプリングと日本株高 note 2023年6月29日
 「アステラス社員拘束」の恐怖 toyokeizai.net 2023年3月28日
 コマツ、中国子会社を再編 生産能力4割減 日刊工業新聞2023年3月14日 
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Profile of Masaki Ina

稲正樹(いな まさき)  稲正樹 wikipedia 1949年生まれ 1973年北海道大学法学部卒 1977年北海道大学大学院法学研究科中退 1994年に北海道大学にて博士号授与。法学博士。 インド憲法の研究:アジア比較憲法論序説 北海道大学博士(法学)乙第4443号 1994...

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