Baumol's cost disease ボーモルのコスト病
当初のボーモル(William J.Baumol 1922-2017)の指摘は、音楽家を例に19世紀初頭と20世紀後半との間で生産性は変わっていないというもの。つまり人的活動に依存する分野では、生産性は変わりにくい。そしてもう一つの指摘は、それにもかかわらず「高等教育」「法務」「医療」などでは、その価格が、生産性の改善が著しい物的生産の分野より急速に上昇していることだった。この生産性の改善がほとんど見られない分野の高コストが、「ボーモルのコスト病」である。そしてこのことが可能であるのは、生産性を上昇させた側がこれらへの出費を賄えているからであり、政府の支出も関係しているとした。またボーモルは、この生産性の低いサービス業が、国民経済の中で比重を高めていることも見出した。
このお話しは、産業構成においてサービス業など生産性の低い産業が増加するとともに(二次産業の比率が低下するといった産業構成の変化とともに)、経済成長率が低下する現象を、ボーモル効果Baumol's effctと名付けることにつながっている。
ただ疑問として残るのは、サービス業としてくくったときに、そこには医者や弁護士など高給与の人々もいれば、末端の労働者のように低賃金の人たちもいる。生産性が低いにもかかわらず高コストの例示が「高等教育」「法務」「医療」とされるが、そもそもこれがサービス業の代表的なものだろうか。働いている人の数で考えれば「商業」とか「運輸」などがより代表的ではないか。「高等教育」「法務」「医療」はサービス業のなかでも特殊なものではないか。例示にも、くくりにも問題があるように感じた。
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