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Concussion

フットボール(ラグビー)による脳損傷リスク 

 たまたまConcussionという2015年の米映画をみた。Concussionは脳震盪という意味。映画はフットボールによって脳が損傷する可能性を指摘した解剖医の競技団体(NFL)との戦いの話であった。米国ではフットボール(英国ではラグビー)ではしばしば、生涯にわたり後遺症が残るような大けがをすることが知られているが、激しいぶつかり合いの繰り返しやタックルで、脳が損傷を受けるとの指摘は、想像できることだけに衝撃的だ。なぜ衝撃的かと言えば、激しくぶつかることが競技の見せ場になっており、そこに問題があるという指摘、脳に不可逆的ダメージを与えるという指摘は、フットボール(ラグビー)は禁止すべきだという指摘と同じであるからだ。問題は脳震盪を起こした直後だけではなく、脳が慢性的にダメージを受けていること(CTE:chronic traumatic encephalopathy 慢性外傷性脳症)が、かなり時間が経ってから精神障害が現われて判明することが多いことも悲劇的だ。プロ選手のように長期間競技を行った者だけでなく、若いときにごく短期間競技しただけでも、ダメージの悪影響は一生涯に及ぶ。つまり脳が受ける打撃による損傷の影響は不可逆的で、極めて高い確率でその人とその家族の人生を壊滅的に破壊する。
 私自身の考えは、このような残酷な「スポーツ」はそもそも禁止されるべきだというものだ。多分競技団体とか競技者の中には、さらにフットボール(ラグビー)ファンの中には、反対の意見もあるだろう。しかし、生涯にわたり影響がある、脳に損傷を与えるような競技は「スポーツ」の名に値しない。と思って調べて見ると、海外では多数の訴訟が起きていることがわかる。
 他方でこの問題に関連して、医学者でないトレーナーが、トレーニングによって損傷を避けられるからとトレーニングの重要性を強調する文章を発表したり、競技団体が、脳震盪の事故のあとについて、事故の影響は一般化できないので、競技者のプレイする権利について配慮すべきだといった指摘を、事故後の指針に書き込んでいる。しかしトレーニングによってリスクを低下させるとか、本人が事故の後も競技を続けたいと言っているといった指摘は、一生涯に渡る脳損傷のリスクという深刻な問題とはとても比較できない。本来はそもそも出すべき論点ではない。
 フットボール(ラグビー)と同様の印象が強いのは、ボクシングという競技だ。あれもスポーツというが、実態は殴り合って相手の体に損傷を与えるものにみえ、しばしば脳震盪を起こして倒れる姿が記憶に残る。ボクシングの場合についての脳震盪リスクはすでによく知られている。
 すべてのスポーツには肉体的負荷が付き物であり、行えばリスクは伴うものであり、リスクを避けていては競い合いが成り立たないという理屈も分かる。さらに危険を承知して本人が競技を望む場合はどうかという立論も分からないではない。だから意見は分かれるところだが、私自身は、誰であれこうした生涯にわたる不可逆的なリスクを取らせることには反対だし、これらの危険なスポーツの存在に反対だ。私自身の考えは、このような人の一生を破壊する「スポーツ」はそもそも禁止されるべきだというものだ。
 フットボール(ラグビー)やボクシングで、興奮する人もいるだろう。ただ、人が人を傷つける場面が見世物になっていることは否定しがたい。私自身は、人が人を傷つける姿を見ることが娯楽になっていることを見ていて痛々しいと感じる。

 子供のラグビー認めるのは児童虐待 英研究 CNN 2024/02/03
   Risk of degenerative brain disease CTE increases with longer rugby careers, University of Glasgow 2023/10/24 
   Risk fo chronic traumatic encephalopathy in rugby unions associated with length of playing career, Acta Neuropathplogica, 2023/10/04
 コンタクトスポーツによる脳損傷リスク WIRED 2023/10/03
   Head injuries: Nearly 300 rugby players suing over brain damage, BBC 2023/08/31
  How football raises the risk for chronic traumatic encephalopathy, National Institute of Health 2023/07/11 
   New BU study finds tacke football at young age raises risk for brain decline later, The Brink, 2023/03/06
   Risk of brain disordes more than twice as high rugby players, Cosmos Magazie, 2022/10/05
 40代で認知症も 元ラグビー選手100人以上が訴え SAKISIRU 2022/07/27
 頭部損傷の元ラグビー選手Gが統括団体提訴 AFP    2022/07/25
   What to know about CTE in football, The New York Times, 2022/07/05 
 ラグビー選手 1シーズンでも脳に悪影響 NewsWeek日本版 2021/09/15
 接触型スポーツと脳疾患発症リスクAERA dot. 2020/02/03  
 タックルが原因で死亡 8ケ月で4人 仏学生 AFP    2019/01/08
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Profile of Masaki Ina

稲正樹(いな まさき)  稲正樹 wikipedia 1949年生まれ 1973年北海道大学法学部卒 1977年北海道大学大学院法学研究科中退 1994年に北海道大学にて博士号授与。法学博士。 インド憲法の研究:アジア比較憲法論序説 北海道大学博士(法学)乙第4443号 1994...

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