Field of Dreams (1989)
野球を題材にした映画だが舞台はアイオワの農場。主人公は農場経営に乗り出したばかり。トウモロコシ畑で作業していると「それを作れば彼がやってくる」という声が聞こえる。それというのは野球場field、そして彼というのはとっくに亡くなったShoeless Joeという伝説の野球選手だった。囲いこまれた農地をfieldというが、野球などスポーツをするための土地もfieldという。物語はそこから主人公と野球好きだった父との物語に移ってゆく。この映画は、伝統的スポーツとしての野球の話であり時を超えた和解の話でもある。主人公をKevin Costner、途中から主人公に加わる作家テレンス・マンをJames Earl Jonesが演じている。登場する球界を追われた野球選手たちが、主人公がつくったマウンドを見て問う。「ここは天国なのか」と「いやここはアイオワだ」と主人公は答える。「天国とはどういうところなのか」と主人公は問いかける。「天国とは夢が実現するところだ」と答えが返る。妻と娘が憩う姿を遠望して主人公は「確かにここは天国かもしれない」と述懐する。
Shoeless Joeは愛称で実名はJoe Jackson 1887-1951。大変優秀な成績を残した選手だったが、1919年の試合で八百長の疑いをもたれた。八百長を供述したとの話もあるが、強引な誘導があったのかもしれない。裁判では証拠不十分で無罪になった。しかし1921年にコミッショナーはJoeら8人全員を永久追放処分にした。映画でfieldに現れるのはこの選手たちだ。
途中で入ってくる作家の名前はテレンス・マン、モデルはJDサリンジャー(J.D.Salinger 1919-2010)だとされる。学校の講堂でのテレンス・マンの本の禁書をめぐる議論は、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の禁書騒動をなぞったものとのこと。あるいはこのテレンスの本を巡る講堂でのやりとりは、追放処分になった選手たちへの同情と重なるのかもしれない。
Endingは感動的だがやや作為を残す。Pay it Forward (2000)のEndingを思い出した。しかしこれ以外にはないかもしれないのだが。