Major Writings of Jun’ichi Hirata

 平田純一氏の著述目録。1973年に埼玉大学卒業後、ICUにて修士。その後、NY州立大バファロー校にてPh.D.帰国後、長岡技術科学大学を経て1988年に立命館大学に赴任(経済統計学 マクロ経済学)。立命館アジア太平洋大学で副学長も務めた。

講演 大学の役割と環境変化―大学教育のグローバル化と学生への動機づけ 大学教育研究フォーラム 2014/03/18

共著論文 西村和雄ほか3人と共著 数学教育と人的資本蓄積 Journal of Quality Education Vol.3 2014 1-14

共著論文 西村和雄ほか3人と共著 基本的モラルと社会的成功 RIETI DPS14J011  2014/02

共著論文 西村和雄ほか3人と共著 大学入試制度の多様化に関する比較分析 RIETI DPS13J019   2013/03

共著論文 西村和雄ほか3人と共著 理数系科目の学習に対する労働市場の評価 大学論集 44 2013/03  147-162 

日本経済の今後を考える上で―1980年代以降の推移と現状の評価ー 社会システム研究 22 2011/03   185-199

経済学部教育における質保証とその前提 大学時報 59(232)  2010/05  60-65

共著 山田彌・松村勝弘と共著 経済・経営学部の情報リテラシー Windows XP版 学術図書出版 2009/04   (その後 2011/04には Windows 7版)

大学院留学生の入学前プログラムの開発-現状と課題 立命館高等教育研究 8 2008/03 77-91

日本における1970年以降の貿易構造変化と輸入関数の推定 社会システム研究 12 2006  45-73

1970年以降における日本の貿易構造変化 経済学論纂 46(1・2) 2006 107-128

少子・高齢化に伴う日本経済の課題 立命館経済学 54(5)   2006/01  998-1021

高度経済成長―日本の経験と中国の経済の今後 立命館経済学 54(3)  2005/09  600-634

データを用いた経済分析への誘い NEEDSデータベースとEViewsの利用方法 立命館経済学 52特前 2003/10   49-96

共著 山田彌と共著 経済学部の情報処理入門 学術図書出版社 2000/04

共著 松川周二と共著 経済学のエッセンス 中央経済社 1999/06

戦後日本の産業構造の変化-データによる確認 立命館経済学 47(5)   1998/12  761-784

報告 日本経済の発展モデル 立命館大学人文科学研究所紀要 66 1997/01  228-236

共著 新海哲哉・豊原法彦と共著 Excelによる情報処理入門 1996/06

日本における戦後の経済発展とマクロ経済政策 立命館経済学 43(3)  1994/08   434-458

日本の消費関数 立命館経済学 43(2) 1994/06  78-109  四半期データ

日本の消費関数 立命館経済学 43(1) 1994/04   23-49   暦年データ

為替レート決定における相対価格水準の影響ー円ドル為替レートの実証分析 立命館経済学 38(1)   1989/04  34-55

貨幣需要関数の安定性 立命館経済学 38(4・5)  1989/12  178-230  S40年代と50年代

変動為替レート制下の国際収支と為替レートのラグ構造:円ドル為替レートの実証分析 長岡技術科学大学研究報告9 1988/08   77-89

日本の貨幣需給:貨幣乗数理論による分析 長岡技術科学大学研究報告8 1986/10 297-307

Economic Notes 経済学草稿

経済と経済学についての認識
 
振り返って、自分は経済と経済学についてどのような認識に到達したのだろうか。幾つかのポイントに分けて述べて記録しておくことにしたい。

支払い手段としての貨幣
 貨幣を支払いにおいて用いるのは、債務が発生していて、その債務が貨幣の支払いによって清算されるからである。
 商業取引の原初的形態は、商品を受け取り、それに代価を支払うことだが、やがて掛け取引、信用取引が始まる。信用取引においては、商品はすでに受け取られており、商品の授受に遅れて支払いが行われる。
 掛け取引を、売った側からみると売掛(うりかけ)債権、買った側から買掛(かいかけ)債務が発生しており、支払いはこの債権債務状態の清算である。 

貸付の発生と利子の合理性ー擬制資本
 では期日に支払われないときはどうするか。自動的に貸付が行われないときは、債務不履行となる。企業であれば債務不履行を避けるために、金策に奔走することになる。金策は、借入もあるし、預金の取り崩し、保有資産の売却、ほかの支払いを延期する、など様々な方法がある。ここでは仮に借入が可能だったとしておこう。
 この借入の貸付は、債権者が行っても良いし、第三者の貸付業者が行ってもよい。そこで発生するのが利子である。この利子の請求にはどのような合理性があるのだろうか。
 貨幣が時間を経過とともにより多くの貨幣を生み出すということが人々の意識に一般化した段階で、貨幣の貸借時の利子には合理性が生じたのではないか。私は、農業において種を蒔いて収穫するというプロセスがこの観念を生み出したのではないかと考えている。だからこそ、利子の発生は農耕とともに古い。身分制社会が終わり、資本制生産社会が始まる前から利子は存在していた。
   今日、利子の大きさは借入する者の信用リスクにより大きさに差がでる。たとえば、貨幣発行権や税金徴収権をもつ国はもっとも信用リスクが低いと考えられている。国の債務利子(国債利子)は、もっとも当該国で低利と考えられる。
   利子の大きさがこのように導けることから、利子の金額から、その利子の金額を生み出す元の資本の大きさを導くことができる(①)。このような計算を資本還元と呼ぶ。ここで導かれた大きさはただ計算で導かれたモノであり、架空のものである。架空資本(擬制資本fictious capital)と呼ぶことにしよう。

  利子の金額/利子率 = 元の資本の大きさ       ①
      利子の金額     = 元の資本の大きさ×利子率     ② 
  
   企業経営者が借入れを行う場合、それぞれの企業の信用リスクの大きさは、各企業の信用リスクの大きさを反映することになる。

信用リスクを低める手立て
 貸し手にすれば、信用リスクを承知で貸し出すには、貸出金を担保するさまざま「保証」が必要になる。これには物的担保と人的担保とがある。物的担保とは貸付金額と同等以上のモノを貸付側に差し入れること。人的担保とは、借り手が返済しない場合、借り手に代わっての返済を第三者が請け負うことである。
 企業経営者が借入れを行う場合、それぞれの企業の信用リスクの大きさは、各企業の信用リスクの大きさを反映することになる。信用リスクの中身を考える。返済の意思の真実性に差異がないとすれば、各企業の財務状態、事業リスクが影響する。その企業のCFを見て、流出と流入の差が返済を賄うのに十分であれば、貸付企業としては安心できる。
 個別企業の借入利子=国債利子+各企業の信用リスクプレミアム
 もともとの利子の大きさの特徴は、借入時点で大きさが決定されているという点である。現代では変動金利があるが、そのことも含め、借入時点で利子の大きさが約定されているとと表現しておく。

中央銀行
 現代において、政府の銀行でもある中央銀行の銀行券が貨幣となっている。中央銀行券はかつては金貨と兌換される、兌換銀行券であった。現在は、金貨と交換されないという意味で不換銀行券である。兌換されていたときには、中央銀行の価値は金貨という実物資産の価値に裏付けられていた。不換になっても支払いに受け取られるのは、政府がそれを法律によって法定通貨に定めている(強制通用力の付与)からである。中央銀行券の信用力は、金貨ではなくそれぞれの政府によって裏付けられ、強制されている。
 国際間の取引では一国の法律による強制力は効力を持たない。今日国際通貨として通用力の最も高いのは米国のドルであるが、このドルに対する交換比率が日々存在することで、国際的な決済が成立している。
 外国通貨との交換比率は為替相場とも言われるものである。他方、ある国の通貨を取得すると、その国でものが買えるし、あるいはその国で資金運用ができる。そこで理論的には、各国で購買力や金利収入に差がある場合、それらを均等化するように為替相場が変動する。短期的には金利収入格差を均等化する方向に、また長期的には購買力格差を均等化する方向に為替相場が変動することが知られている。


資本制生産
 先ほど資本制生産という言葉を使ったが、資本制生産が古代からあるように考える人もいる。しかし身分制社会が、「産業革命」以降、資本制生産が広がってからと壊されてきたことは確認できる。たとえば江戸時代において、農民(百姓)とされた人は百姓で、商人は商人、武士は武士だった。こういった身分制社会が、日本でも明治時代以降、壊されていったことは事実ではないだろうか。つまり身分制の解体というのは、資本制生産の明確な標識ではないだろうか。その意味で日本は、明治時代以降、資本制生産社会になったといえるのではないか。
 資本制生産社会では、資本を所有する資本家と、賃労働をするしかない労働者とが現われる。資本家は資本と労働者の労働力とを用いて、生産活動を行う。資本制生産社会は、資本家と賃労働者という新たな階級を作り出したともいえる。
 ただそれまでの身分制社会と異なるのは、形式的には階級間の異動は可能である。私の考えでは、この階級内そして階級間の移動が可能である場合、資本制社会は競争による平等性が確保された社会と表現できる。そこで、階級内での位置や、階級間の移動が、確保されているので、地位の上昇は個人の努力の結果とみなされる。成功失敗は個人の努力の結果というイデオロギーが社会に蔓延している。しかし各人が、生まれた最初の位置(所属する家族やコミュニティ)は、各人の努力の結果の結果と言えないし、各人が受け継ぐ先天的な能力にはそもそも差があるという問題は残る。

資本家間の競争
 ここで見落とされてならないのは、実際の資本家は、競争しており、生産活動によって利益を上げるのは、容易ではないことである。
    とくに企業が生産するものの消費するものが、一般大衆が消費者の王様になるほど(大衆消費社会)、モノが豊穣になると(商品生産の一般化)、生産すれば、確実に売れて利益が出るわけではなく、消費者の好みを考慮した生産をする必要があるし、販売宣伝などで消費者を刺激する必要もでてくる。
 このように消費者のニーズに合わせてきめ細かく生産するには、市場経済あるいは競争社会を維持する必要がある。これが、ソビエトロシアそして中国で実施された計画生産から得られた教訓である。計画生産社会では、モノ不足が起きても誰もそのことに責任を取らず、行列したり賄賂を渡して入手することが生じた。品質やサービスの改善に無関心であることが広がった。そうした社会よりは、企業経営者が消費者のニーズに関心を持ち、品質やサービスの改善が図られる社会を私たちは望んでいる。
 しかし市場経済を維持するということは、企業が競争すること、競争に敗れた企業が退出すること、新たに企業を立ち上げ、市場に参入すること、これらが認められることを含んでいる。それはさらに各個人にとっては、失業したり、目指すポストが得られないという問題(人生における競争)があることを意味している。市場を通した競争に比べて、組織における競争には、人が評価するため縁故による優遇が生じやすいなどの不合理な面がある。客観的な評価が成立するように工夫が不可欠である。

競争することの問題
 市場での企業間の競争は結果として消費者のニーズに合わせた生産をつながるわけだが、それでは入学、教育評価、就職、仕事の評価、と続く人の人生での競争は何を意味しているのだろうか。競争に落後した人は、価値が低い人なのか。実は、市場競争の背後にある人の競争の問題に関してときどき思うのは、競争で敗れた人達は、皆いい人たちだったということだ。それにも拘わらず、そのよい人を傷つけることがこの社会では生ずる。また心の中にいつまでも残るのは、困難なときに助けてくれた人。また逆に、路を塞いだ人の心のなさもいつまでも記憶に残る。しかしこうした思いが残るのは、この世が競争社会だからと思う。つまり競争社会には明るい面と暗い面の両面がある。市場競争を認めるということは競争社会を認めることだが、その暗い面をどのように解消するかの対策が必要だということでもある。

資本制生産と計画性生産
 資本主義生産は計画性生産と無縁ではない。企業は、自ら販売計画、生産計画を立てている。ただ販売は一般的には見込みである。その販売動向をみながら(販売見込みとの乖離は在庫に現れる)、生産計画の修正が行われる。商品の性格によっては、在庫は廃棄とか、値下げ販売につながる。企業は、この在庫の最小化(最適化)を常に追求している。
 硬直的な計画生産にあっては、この修正が行われず放置される。これに対して資本制市場経済のもとでは、価格と利益の変動がシグナルとなって、生産の過不足の修正が行われることを期待できる。この期待を実現するためには、市場が競争的であること、企業経営者が、価格・生産・投資などを独立して判断できること、結果としての利益が企業に帰属すること、などの条件が必要である。
 資本制生産の特徴として、封建時代の身分制社会からの脱却をすでに上げたが、もう一つの特徴は、市場の価格と企業の利益というものをシグナルとして、生産の調整が行われる社会という点を挙げることができる。

価格変動による利益の容認
 このような市場経済では、需給変動により価格が変動して利益が生まれたり損失が生まれたりする。市場経済を認めるということは、このような価格変動による利益を容認することを当然に含んでいる。一部にはこのような利益を毛嫌いする人がいるが、市場経済を容認するということは、このような市場価格変動による想定外の利益変動を認めるということである。発達した市場はたとえば、保険や先物の形でリスクヘッジの手段を提供している。価格変動はリスクではあるが、そのリスクをある程度ヘッジすることは可能である。

利益の不確定性
 では利益(利潤)とは何か。企業経営者が、企業経営のリスクを負担することによって生み出す利益のことである。利益の大きさは事業活動の結果として、生み出されるものであるので、事前には確定できない。貸付業者からの借入は、しかしこの利潤より低いのでなければ、そもそも実現しないであろう。つまり、貸付が存在する条件は、一般的には以下のような条件が成立していることだと考えられる。
          予想利益率>利子率
 しかしもしこのような条件が存在するのであれば、債務返済のための借入から進んで、さらには事業規模を拡大するために債務を拡大することへの大きな誘惑が、企業経営者には働くように見える。単純にそうならないのは、そもそも予想利益はあくまで予想で不確定であること、また事業規模拡大自体にもリスクが存在するからだ(規模拡大自体が容易ではないからだ)と考えられる。

流動性への対価
 利子率の大きさには、貨幣の流動性を手放すことに対する報酬だという考え方(流動性選好説)もある。確かに人(企業でもいい)が手元資金をすべて、投資に振り向けないのは、現金の流動性が評価されているからだ。現金の流動性は、不確定性が高まるような状況のとき、評価があがり、将来の見通しが明確な時には、評価が下がる。

リスク資産への評価
 さまざまな投資資産があるとき、投資資産のリスクの違いから、投資資産がどのように選好されるかは変化してゆく。ここで、株式と国債という二つの投資資産から上がる収益をそれぞれ、rとiだとすると、一般的にはr>i。その間差が広がると、株式への資金流入が増え、間差が縮小すると、国債への資金流入が増える。事業環境が良くて、企業収益の拡大が見通せるとき、rはiに比べて順調に拡大する。こうした時に、株式への投資が増えることを、リスク資産である株式への投資が増えた、と表現する。
 国債が無リスクだというのは、言い過ぎであるが、発行者である国家は、企業と違い倒産リスクがないとして、国債は無リスク資産として定義され、その利子率は、リスクフリーレートrisk free rateと呼ばれることがある。


経済成長率と自然利子率の低下
 先ほど利子率が資本制以前から存在した理由として、農業において種をまいて、撒いた種より多くを収穫できることが、関係しているのではと述べた。それでは、発達した資本制経済で同じ問題(利子率の目安となる数値)はどこにあるのだろうか。私はそれは、経済成長率ではないか、と考える。この経済成長率の大きさが、利子率の目安になるのではないだろうか。
 経済成長率は、労働の投入量、資本の投入量、そして、生産性。この3つの要素の変化によって決まるとされている。そして先進国では、出生率の低下、人口の高齢化が顕著で、日本を含む一部の国は、総人口の減少に直面している。日本についていえば、先ほど3要素でいえば生産性の改善が進まず、国内資本投資が増えないなか、若年人口が減少し労働投入量が減少に転じている。その結果、経済成長率も低下。結果として、経済成長率を参照して推移してきた利子率も下がることになった。
   自然利子率とは、金融緩和でも金融引締めでもない景気に中立的な利子率のこと。経済成長率が下落すると、自然利子率も押し下げられる。

自然成長率の低下
 ハロッドの考え方で自然成長率Gnとは、完全雇用を達成した状態での成長率のこと。日本では人口の減少もあって、失業率は低下している。労働力人口を減少しており、自然成長率Gnも押し下げられている。
 設備投資(資本設備の増加)、技術進歩率(生産性)の伸びで労働力人口減少をカバーできず、Gnが低いか、ゼロ化した状態が、日本などの状態ではないだろうか。自然成長率の低下は、当然のように自然利子率を押し下げる。
 利子率の低下は、量的緩和政策の結果と理解されているが、そもそも自然成長率の低下により自然利子率が低下している問題も考慮されるべきだろう。

生産年齢人口の縮小
 少子高齢化による生産年齢人口の低下について、端的には現役時代に比べて稼得所得が急減する。高額の給与所得から年金と資産からの収入に依存する状態に移る。このとき、公的統計では、年金しかカウントされないので、実際以上に所得は急減する。このことは成長率のダウンにつながるのではないか。
 他方。高齢世帯の消費が、維持される背景には、このような年金以外の副収入の存在がある。一部の世帯は勤労を続けている。また低資産世帯では資産の切り崩しがあり、高資産世帯では配当・賃貸収入などさまざまな副収入がある。こうした年金以外の副収入は、統計上十分にカウントされていない。

自己資本の意義
 企業経営者の経営リスクを担保するのは、最終的には自己資本の大きさだと考えられる。債務である他人資本は返済せねばならず、債務への支払いは確定している。これに対して自己資本は返済を要さず、支払いは変動してよい。つまり自己資本は経営リスクを負担するリスク資本だといえる。
 では自己資本はどのように集められるのか。起業の最初の段階をみると、まずは関係者(縁故者)による出資である。つぎには、利益の留保(内部留保)である。
 自己資本の強化が必要になる理由は、経営者から見て、経営に対する干渉が少なく、利益配分をコントロールできることが大きい。例えば借入れは、経営に対する干渉を招くことがある。そのことにより、企業のガバナンス(統治)が改善されるという見方がある反面、経営上の自由度が損なわれることがある。そうした意味で関係者による出資や内部留保が、経営者に好まれる。

事業主体としての株式会社
 
株式会社の登場の意義はさまざまに考えられる。もっとも大きな問題は、出資者(株主)と経営者が分離するということではないか。つまり経営者は必ずしも支配的株主である必要はない。それでも経営者であるのは、全出資者(株主)に対して、誠実に経営を行う義務を負っている。
 なお株主は、出資の範囲で損失を受ける可能性がある、という意味で責任が限定されている(=有限責任)。株式売買という形で、その責任から抜けることもできる。株式が取引所の上場されると、株式には株価という市場評価がつく。
 株主は必ずしも企業経営に関心をもたず、単に保有資産としての株価評価だけに関心を払っても、構わない。つまり株主は、企業経営に不誠実であっても構わない。この状況(所有と経営の分離)において、企業経営に誰が誠実に取り組むのか(責任があるのか)という問題が生じている。ガバナンスが不徹底であれば、企業経営者が自己利益を追求するなど暴走する可能性があり、経営の在り方(ガバナンス)に社会全体が関わる必要も生じている。

取引所規制、国家による法規制、メデアによる監視
 
取引所による上場企業に対する様々な開示規制。国家による企業規模や業種に応じた各種の規制。さらにはSNSを含めたメデアによる監視。これらが組み合わさることで、企業経営の在り方を社会的に好ましい方向に誘導することが、必要である。
 他方で社会的に好ましい方向、これが正しく導かれるには、議論を支える調査・研究が十分なされる必要があり、言論や出版の自由が確保される必要があり、民主主義的な議会が存在し機能している必要がある。
 さて現在の日本は、これらのことをどこまで達成していると言えるだろうか。  

上場の意義:経営者は干渉を減らそうと行動する
 事業活動の拡大とともに、自己資本が不足するフェーズ(段階)が考えられる。関係者による出資や内部留保では、必要な大きさを賄えない場合。そのときに、関係者以外の外部からの資金受け入れが必要になる。しかし借入れは返済しなくてはならず、利子負担もある。望ましいのは資本金の増加である。では出資を受けるのはどうか。縁故先や取引先からの出資が考えられる。しかし多くの企業が目標として考えるのが、取引所に上場して(株式を公開して)、広く公募増資を行うことである。公募増資は、多数の株主を管理するコストが発生するが、小口株主の経営への干渉程度は、低いともいえるので好まれる。取引先などからの大口出資は、取引先との関係強化のために出資を受け入れる場合もある(第三者割当)が、経営干渉を招き企業経営者の選択肢を狭めるリスクもある。
 企業経営者は、基本的に自己への干渉を減らそうと行動する。しかし、時に個人的利益を追求すること(自身の報酬・待遇に引き上げ 自身の権威を高める人事・投資の実行)がある。そこで経営者を株主の代理者として、株主利益を追求するように圧力をかけることが正しいとの考え方がある。他方、経営者の側の言い分は、株主はしばしば短期利益(性急な利益配分や株価上昇)を追求し長期的な観点の投資に否定的である、長期的成長の観点から投資するなど、企業の将来を見て経営できるのは、自分たちだと考える。これに対して、株主のなかの大きな機関投資家は長期保有に転じており、必ずしも短期利益主義ではない、との指摘もある。誰が企業経営の担い手としてふさわしいか、正反対の議論が存在する。私は企業経営者の外部からの干渉を嫌うという視点から、全体を考えるべきだと主張する。
 なお上場(株式の公開)には、企業の認知度を上げたり、株式公開企業として企業の体裁(ガバナンスの仕組み)を整えるメリットがある。しかし、外部ファンドなどが株を買い占め、経営に干渉してきたり、あるいは、敵対的企業買収の標的になるリスクがないとはいえない。また、企業経営の自由度は、非公開企業に比べて低下する。株式未公開企業が上場する場合、こうしたリスク対策を十分事前に取ることが望ましい。

個別株価の不確定性と市場分析
 株式を公開することで、株式市場で株価が形成される。この株価について、「理論株価」を探す試みがさまざまに存在する。また比較基準になるものも、存在する。例えば、一株当たり配当、一株当たり利益、一株当たり純資産のように。これらと株価との関係をみた、配当利回り、株価収益率、株価純資産倍率は、確かに有用な数値で、多くの投資家が投資の参考にしていることは疑いはない。しかし株価というものは、ある「理論株価」に収斂するといったものではない。
 それゆえ「理論株価」を見つけようとする様々は探求を頭から否定する必要はないが、「理論株価」自体が常に変動しているともいえる。
 株式市場の投資利回りは、銘柄ごとにリスクプレミアムが異なり、かつそのプレミアムが絶えず変動しているのではないか。つまり資本還元できるとしても、求められる値は常に変動している。

   株式の個別投資利回り=利子率+個別の変動リスクプレミアム

 他方で、誰が市場に資金を投入しているか(株式を保有しているか)、誰が市場から資金を引き揚げているか(株式を売却したか)という情報は、確実な数値として捉えることができるので、私はこのような所有変動分析を主体に考えるべきだと考える。
 保有主体の変遷を市場全体の動向の変化(上げ相場、高騰、下げ相場、暴落)とを結びつけることには、十分な合理性がある。つまり、投資家として全体として、リスク投資を増やし、そのため市場が全体として上げ相場になったという分析は意味があるが、その相場の中での個別銘柄の時々の動きは、とらえどころのないものと私は考えている。
 個別銘柄の時々の動きは、(個人投資家の場合は)市場心理のようなものにも、(機関投資家については)プログラム化された動きにも左右される。

資産価格変動利益の容認
 資本制経済で市場を作るのはいわゆる商品だけではない。さまざまな資産も市場を形成する。株式はそのなかでも、企業業績を反映する点で、象徴的な存在である。ここで一言挟む必要があるのは、資本制市場経済を支持するということは、このような資産市場で生み出される利益をも容認するということを意味する点である。
 その意味で資産価格の変動による利益を敵視する考え方は、少し極端だと私は考える。

福祉国家とそしてケインズ政策
 
経済システムの在り方をすべて市場に任せる考え方が、市場経済だともいえるが、大きな例外が形成されている。
 資本家に対して労働者が組合を作って対抗することが認められている(憲法28条 勤労者の権利 労働三権:団結権、団体交渉権、争議権)。また失業に対して失業保険制度がある。退職後について年金制度がある。そして社会保障制度がある。社会保障制度には、社会保険(健康保険)、社会福祉、公的扶助、保険医療・公衆衛生の4つの柱がある。
 これらの制度の整備は何を意味するのだろうか。また、今日の国家は、市場経済の進行を市場に任せるだけでなく、景気悪化には景気の振興策をとり、景気過熱には過熱を抑制するように対応している。しかしこれは、経済システムをすべて市場に任せるという建前からは大きく変化している。
 まず労働者の権利とか、社会保障制度の問題に関しては、福祉国家という観点が重要である。労働者ーそれは国民の多くと言っても良いが、その福祉向上を国家が目指すように、国家の在り方が変化したということである。背景に私があると思うのは、国の政治の在り方の変化である。議会制度が始まり、選挙権が次第に成人国民全体に広げられた。国の政治は、国民の権利や福祉の向上を目指すものに、変化せざるを得なくなったのではないか。つまり、国家というものを個人と敵対するものではなくなっている(福祉国家論)。国家が福祉政策の担い手だとすれば、国家を個人と敵対するものとみる見方は一方的だといえる。
 その流れの中で、大不況のように大量の失業者が出るような場合は、国家が積極的に公共事業を行うべきだとの考え方―ケインズ政策と呼んで置くーが支持されるようにもなった。ここでケインズの名前を出したのは、景気悪化に対して、公共事業への支出を積極的に行うなど、景気調整的な政策-景気悪化すると税収は落ちるので、財政の収支均衡を重視すると歳出削減となる。しかし、それは政府が景気を悪くする方向に舵撮ることになる。そこでむしろ不況期はに歳出を拡大する、そのために不足する財源対策として国債を発行するなど、債務を敢えて拡大することを容認する。ーこうした政策をまさに推奨したのが、ケインズだった。つまり失業について、あくまで本人が失業を選択したという考え方に対して、ケインズは、市場に国家が介入して、公共事業を行ったりして積極的に総需要を押し上げることを提唱した。
 このような考え方(不況時の失業対策事業+社会福祉政策)が支持されるように変化したことは、資本主義の在り方からすれば大きな変化だった。現在、中央銀行が利子率を引き下げて景気振興を図ったり、逆に利子率を引き上げて景気過熱を抑制したり、といった金融政策をとるという考え方はその延長にある。この考え方は、経済が不況に陥ったり過熱したりといったことに対して、中央銀行が細かく調節することを認めているので、ケインズ政策以上に、国家(中央銀行)が、市場に介入することを認めていることになる。
 その結果であるが、資本主義の在り方は、国家の経済の介入の在り方という点で大きく変化したといえるのではないか。

資本制市場経済の問題の所在
 資本制市場経済については、株式会社経営を社会全体で監視するという一つの方向性がでている。しかしそうした方向では不十分で、資本制経済そのものを見直すべきだという意見がある。
 二つの問題が知られている。一つは競争原理を肯定するなかで、人々の間の格差が実は拡大、固定化しているのではないか、ということである。もう一つは、絶えざる成長拡大を追求する結果、地球環境の限界を超えても、なお自らそれに歯止めをかけられないのではないか、ということである。
 これらの問題に対して、修正の努力も行われている。たとえば、教育費を無償化する話は、家庭環境に左右されずに、教育機会を均等化しようということで、格差拡大を和らげようとする政策(再分配政策)である。環境問題を意識して、社会の目標値を、経済成長以外のところにおくべきだという主張は、後者の環境問題を意識したものである。

成長の限界あるいは定常状態
 
経済成長以外に社会の目標を置くべきだという議論がある。たとえば十分な労働時間の短縮、良好な自然環境の維持、子育て環境の改善、介護施設の充実、など色々考えられる。これは、一方で経済背長は先進国ではすでに十分ではないか、という問題意識が背景になっている。経済成長以外に目標を置くという発想そのものに、すでに成長は十分ではないかという問題意識が、垣間見える。
 これは脱成長あるいは、定常状態stationary stateという問題につながる。

反面教師としての中国社会主義
 資本制市場経済について、より根本的改革は可能だろうか。現在、存在する反対軸に中国社会主義がある。しかし、私自身は中国社会主義には幻滅している。議会制民主主義国家でない中国に幻滅する(ディストピア=反理想郷としての中国)。同じような幻滅は、ロシア社会主義についても感じる。
 中国に寛容な研究者の間には中国の現状に理解を示す者もあるが、私自身はこれらの寛容な意見には同調できない。その意味で米国が中国とのデカプリング(米中デカプリング)を進めることに、むしろ共感する。
 問題は、中国が議会制民主主義を否定し、共産党による独裁を維持していることである。このような中国の政治経済の在り方は「市場レーニン主義」と表現されている。共産党以外の政党が支配政党になることを許さない、このような政治体制を私は、支持することはできない。共産党の支配を覆すような、思想・信条の自由や、政治活動の自由は、事実上、中国では認められていない。こうした反対政党の存在を認めない中国は私の基準からすれば、民主主義国家ではない。
 私は経済の問題を語る前に、こうした議会制民主主義の維持を大原則として主張する。この原則を守る前提で経済問題の対策を考えると、格差の拡大を防ぎ環境問題の改善に向けて、社会的合意が取れることを積み重ねてゆくというのが、私の結論になる。結果として、格差の拡大や、環境問題の悪化を防ぐのに、この努力は遅れたり不十分であったりするかもしれない。しかしそうであっても、私は議会制民主主義を守ることを優先して一歩ずつ進むべきだと考える。

Major Writings of Tatebe Masayoshi

建部正義 たてべ まさよし 氏の著述 1944年生まれ 大阪市立大学卒 同大学院修士で飯田繁の指導を、その後、中央大学大学院博士課程で麓健一の指導受け その後は中央大学商学部に勤める。同姓同名者がいないので綺麗な検索結果が得られる。

建部正義 wikipedia
建部正義webcat plus
CiNii 建部正義(著者)
CiNii 建部正義(タイトル) 古希記念論文集掲載論文+建部正義書への書評

抜粋

論説 MMT(現代貨幣理論)批判再説 商学論纂 64(1・2)  2022/09  31-70

論説 日本銀行の最近の金融政策をめぐって 政治経済研究所政経研究 117 2021/12 69-44

論説 21世紀型世界経済危機論再考 商学論纂 63(1・2)   2021/09    69-110

論説 マルクスは「比類なく困難な問題」を解決しなかったのか 商学論纂 62(1・2)  2020/09  75-120

論説 中央銀行デジタル通貨(CBDC)と民間デジタル通貨(libra)をめぐって Journal of Credit Theory 1, 2020, 5-17

論説 ビットコインは貨幣たりうるか 企業研究(中央大学) 32  2018/02 201-221

書評 大谷禎之介 マルクスの利子生み資本全4巻 季刊経済理論 54(3)  2017/10   98-101

論説 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について 日本銀行の「総括的な検証」を検証する 政経研究 107   2016/12   35-48

書評 小西一雄「資本主義の成熟と転換―現代の信用と恐慌」2014年 季刊経済理論52(2) 2015/07 110-112

リプライ 「21世紀型世界経済危機と金融政策」に対する米田貢氏の書評へのリプライ 季刊経済理論 51(3)  2014/10  101-104

参議院調査会参考人 2014/02/26


cf.  米田貢 書評 建部正義「21世紀型世界経済危機と金融政策」2013年 季刊経済理論 50(4)  2014/01   117-120

cf.  井村喜代子「世界金融危機の構図」に対する建部正義氏の書評への反論 季刊経済理論49(2)    2012/07   93-95


Calls for immediate ceasefire in Gaza

UN officials strongly condemn deadly attacks in Israel, UN news 2023/10/07 

UN expert warns of new instance of mass ethnic cleansing of Palestinians, calls for immediate ceasefire, UN Human Rights 2023/10/14

Secretary-General's remarks to the Security Council on the Middle East, UN 2023/10/24 

Israel demands UN Chief Antonio Guterres' immediate resignation, The Economic Times 2023/10/23

UN leader responds to Israel demanding resignation, claims 'misrepresentations', Fox News 2023/10/25

Civilian casualties in Israel-Hamas war are 'alarming' warns UN Secretary-General Gutterres, PBS NewsHour 2023/10/25


Gaza ground war: Israeli troops surrounding Gaza City, BBC News, 2023/11/03 


Over 100, 000 march on Washington DC for a free Plestine, demanding ceasefire, The Real News Network 2023/11/05


American nurse who got out of Gaza describes desperation she saw, CNN 2023/11/07


Spain's lone Belarra! Israel must end 'genocide' of Palestinians in Gaza, Al Jazeera English  2023/11/09


Israeli solidiers close in on Gaza City, panic at hospitals where thousands had taken shelter, Channel 4 News 2023/11/11


French President Macron calls on Israel to stop killing Gaza's women and babies, BBC News 2023/11/11


Hundreds of thousands march in support of Gaza ceasefire on Armistice Day, Guardian News 2023/11/12






ジョブ型雇用 job type employment



 job type employment  ジョブ型雇用 職種別雇用 雇用の在り方の問題として、従来、日本企業が行ってきたのはメムバーシップ型雇用(メムバーシップ型membership type employment)であって、これをジョブ型雇用に切り替えてゆくべきだとの議論が盛んである。従来、日本企業は具体的な仕事は、採用後、企業の判断で割り当てるとして、特定の職種を示して採用することがむしろ例外的であった。採用後、仕事を割り振ったあと、一定年数の仕事の経験値がある者の中から、管理職として適性のあるものが、選抜された。 つまり日本企業は、企業(会社)のメムバーにするかどうかが、採用の判断基準で、特定の職種で募集することは例外的だった。
 逆に言えば、最初の職種とその後の職種に連続性は担保されてなかった。ただ企業は、採用した人の雇用を維持しようとし、また採用された人も、定年退職までその企業にとどまることが多かった。こうした雇用を終身雇用(lifetime employment)といい、賃金体系は年功を重視した年功賃金構造(senority wage structure)とされることが多かった。こうしたメムバーシップ型雇用が日本で長く続いたのには、企業側、被用者側双方に雇用を安定させ長期雇用することにメリットがあったからだと考えられる。企業側からすればこのシステムは、企業への忠誠心の高い人の雇用につながった。被用者側にとっては雇用が安定し、若年時の低賃金がやがて年功による高賃金で報われることは魅力だった。
 しかし活力のある流動的な社会を作り出すには、雇用自体を流動化する必要があり、そのためには雇用の在り方を、ジョブ型雇用に切り替えてゆくべきだと主張されるようになった。コロナ下で多くの企業でテレワーク(work from home; telework)が進んだ結果、仕事の評価において、「勤務時間」よりも達成できた成果がより重視されるようになったことも関係がある。各職種で成果を達成できる人物の採用が必至となり、職種ごとに適性や能力の要件が厳格化した。採用後、すぐに成果を出せる人を採用する傾向が強まることになった。
 他方で、人の仕事を多くがAI(人工知能)に置き換えられるという議論も盛んである。次の時代の専門職は、このAIを使いこなすことが必須になるのではないか。

    autism   Baumol's cost disease   bullshit job capital flight 
      China as a dystopia  choke point   coffee and urinary stone
  dementia   digital Leninism   hysteresis inclusive marketing 
  interstitial pneumonia  job type employment  
  market Leninism   menopause  osteoarthritis  peer pressure
      presbyopia  schizophrenia subarachnoid hemorrhage 
  US-China decoupling Z-generation  


Major Writings of Satoshi Uchida

内田聡氏の著述目録。1990年明治大学卒業 1999年同大学院修了 富士常葉大学を経て2003年より茨城大学。高木仁氏(高木仁著述目録)の弟子。同姓同名の別人が多いので検索結果は吟味する必要がある。

内田聡 researchmap

人文社会科学部主催講演会挨拶 2018/10/31


単著 明日をつくる地域金融 イノベーションを支えるエコシステム 昭和堂 2017/11

同上書評 村本孜 生活経済学研究 48  2018/09

論説 ソーシャルメデイアと地域金融 生活経済学研究 39  2014/03  1-13

論説 ソーシャルメディアの普及する社会と地域金融 月刊金融ジャーナル 54(10)  2013/10  76-79

論説 アメリカのメインストリート金融 信用理論研究 29 2012/03  99-112

論説 アメリカの金融システム~ウオルストリートとメインストリート~ 成城大学経済研究所年報 24   2011/04   25-46

論説 金融危機後のメインストリート金融 日本政策金融公庫論集 9 2010/11 71-96

論説 証券化市場の拡大とメインストリート金融 ゆうちょ資産研究 17 2010/09 107-131

論説 アメリカのウオルストリート金融とメインストリート金融 金融構造研究 32   2010/05   25-30

単著 アメリカ金融システムの再構築 ウオールストリートとメインストリート 昭和堂 2009/04
同上書評 数阪孝志 生活経済学研究 32 2010/09

論説 米国金融システムの二面性 メインストリート金融の存在意識 金融経済研究 27  2008/10  58-78

論説 米国からみたわが国の信金・信組の制度改革 個人金融(ゆうちょ財団)3(2)  2008夏 67-69

論説 米国の協同組織金融機関を見る 月刊金融ジャーナル 49(8)  2008/08 28-31

論説 米銀数の30%を占めるSコーポ銀行:地域別の接近 茨城大学人文学部紀要 44 2007/09 1-25

論説 地域密着を可能にする仕組みとはー米銀行数の30%を占めるSコーポ銀の分析から 証券経済研究 56 2006/12

論説 米国における金融の再編と地域性 生活経済学研究 22.23巻 2006  91-100

論説 米国における金融再編とリレーションシップバンキング:地域の人口動態別接近 茨城大学人文学部紀要 42  2005/09 39-55

論説 米国中規模銀行の現況 地銀協月報 543   2005/09  2-9

論説 地域金融機関は今 誰のための地域金融機関か? 地域金融機関を巡る米国の事例を通じて 月刊金融ジャーナル 46(6)   2005/06   47-50

論説 英国のプライベート・エクイティー米国型の形成過程とわが国への含意 金融構造研究 25 2003/05 18-29

論説 銀行組織の業務多角化と健全性の両立ーアメリカにおけるマーチャント・バンキング容認の意味 中央大学経済研究所年報 33  2002  279-294

論説 Merchant Banking by Bank Organization: The Making Rules in the United States  中央大学経済研究所報 32   2001   421-433

論説 わが国における銀行・事業会社の分離と結合―米欧モデルからの示唆 月刊金融ジャーナル 42(5)  2001/05 81-84

論説 銀行組織による事業会社株式の保有-国際的潮流とわが国の対応ー 証券経済研究 31 2001/05   87-99

論説 銀行と事業会社の分離と結合-銀行による事業会社株式の保有を中心に 証券経済学会年報   36   2001/05  179-182

論説 銀行・事業会社の分離と結合-アメリカにおける変遷と行方 金融構造研究 22  2000/05 40-50

論説 銀行・事業会社の分離と結合-英米における展開 中央大学経済研究所年報 31   2000 551-569

論説 銀行と一般事業会社の結合問題ー金融サービス持株会社の行方 証券経済学会年報 34 1999/05 43-52

学位 総合金融サービス産業の成立に向けて:アメリカにおける業際問題の展開 明治大学博士(商学)1999/03/26

論説 アメリカの銀行業と保険業 持株会社傘下における分離・相互参入問題 明治大学社会科学研究所紀要 36(2)  1998/03  65-77


Stationary State 定常状態

Stationary State by J.S.Mill from Principles of Political Economy Book Ⅳ Chapter Ⅵ (1848)
John Stuart Mill, Of the Stationary State from Principles of Political Economy, 1848

Herman E.Daly, Beyond Growth: The Economics of Sustainable Development, 1996

Critchley,P., The Stationary State of John Stuart Mill, 2004 e-book

植田和弘 豊かさとJSミルの定常状態 農林金融2005/05 20-262~21-263
      ミルは利潤率が低下して人的資本物的資本が一定の状態に至るとしたが 
  しかしその状態は人間の心の進歩向上の停止は意味しないとした
樫本直樹 持続可能な社会についての一考察 J.S.ミル「経済学原理」における「停止常態」の議論を手掛かりとして メタフュシカ 40    2009    79-89

Peter Victor, Herman Daly and the Steady State Economy, 2009

前原直子 J.S.ミルの利潤率低下論と「停止状態」論 季刊経済理論 47(3)  2010/10 79-90

前原正美 K.マルクス「資本論」における歴史法則と資本主義社会に行方:J.S.ミルの2つの「停止状態」論との関連で 中央大学経済研究所年報 43  2012  323-347

Rich Howarth, Economic Growth and the Stationary State, Center for Humans and Nature, 2012/07/12

Gareth Gale, Critiques of Growth in Classical Political Economy: Mill's Stationary State and a Marxian Response, Published Online 10 Sep. 2012 

原田雄太郎 田中俊次 再生エネルギー社会への転換の意義と地域自給に関わる一考察 J.S. MillとH.E.Dalyの所論を手がかりにして 東京農大農学集報 58(3)  2013 149-158

ハーマン・デイリー「定常経済について語る」世界889 2014/08より転載(幸せ経済社会研究所)

松下和夫 変革の思想としての持続可能な発展 現代の理論4号 2015/03

早川行雄 定常状態経済と社会の再封建化 一橋大学フェアレイバー研究教育センター No.1852  2015/11/25  46-58

原田雄太郎 持続可能な社会への転換に関する研究 2015

広井良典 希望としての定常型社会 DIO(連合総研)2016/01  6-9

大森正之 経済学における定常状態と持続可能性 Symbolic Housing no.48 2017 07-14

根井雅弘 英語原典で読む経済学史 ジョン・スチュアート・ミル webフランス 2018/04/20  白水社

安井俊一 J.S.ミルの社会主義論とマルクス 三田学会雑誌 112-1 2019/04  3-14

Yue Xiao, John Stuart Mill and China: Peeking behind China's stationary state, CHOPE(Duke Univ.) Working Paper No.2019-21 

Yue Xiao, John Stuart Mill on China's Stationary State, History of Political Economy, Oct. 2021, 53(5) , 833-856 
    ミルは「原理」のほかに「自由論」で中国の定常状態について論じている。中国では「独裁主義despotism」により蓄積は抑制されて定常状態が生じている。ミルには「原理」において定常状態を望ましいものと捉える観点とともに、30年以上にわたる東インド会社勤務の経験から、中国の定常状態について論じるもう一つの観点が存在する。

Stationary State in Encyclopedia com
 ミルは定常状態が望ましいものでありうることを初めて提起した。マルクスにとって資本主義は成長せねばならないもので改革されえないものであったが、ミルは「経済学原理」において、生産の方法は変化できないことを確言したが、生産の分配は社会の法や慣習に従うものだとした。また利潤の低下の結果としての定常状態を陰鬱な状態ではなく、経済進歩の完美な結果と考えた。またミルは、社会は定常状態を選択できると考えた。そこで人々(労働者階級)が自発的に人口を抑える結果、賃金の低下はなくなる。そしてさらなる成長の必要もなくなる。定常状態は人の進歩の停止を意味しないとしたことで、ミルは量的成長と質的成長とを区別したといえる。 

ヘアースプレー Hairspray

 Hairspray。1988年に制作された同名の映画が2002年にミュージカル化。それをさらに映画化したもの(2007年公開)。人種分離segregationへの反対という重いテーマを扱いながら、興行成績でも結果を残したミュージカル映画として有名。舞台は1962年のボルチモア。ただこの映画から1962年当時のアメリカが学べるという日本人の方のブログには疑問がある。映画では主人公Tracy(Nikki Blonsky)らの活躍で、テレビのダンスショー番組内での人種分離が廃止されるハッピーエンドで終わる。しかし、当時のボルチモアは、それほど進んだ社会ではなかった。正直な状態は、分離の解消を求める運動と分離の継続を求める勢力との争いのまさに渦中にあったように考えられる。
   大柄のJohn TravoltaがTracyの母親Ednaを演じたことでも話題を呼んだ映画だった。

 Danny Lewis, Historic Photos of Baltimore Show the real-life Hairspray, Smithonian Magazine, Dec.7, 2016
   Baltimore's Civil Rights Heritage
   The History of Baltimore


    hairspray full script pdfcoffee  
  hairspray script script-o-rama  

    you can't stop the beat

     by Queen Latifah(Motormouth)






                 Across the Universe Contact Doctor House   Dreamgirls 
                    Extinction Field of Dreams Gandhi Hairspray 
                La La Land Lucy    Million Dollar Baby Miracles from Heaven
                     Olympus Has Fallen   Paper City      Passengers 
                     The Bank The Banker The Blacklist  The Good Doctor 
    The Great Wall The International The Midnight Sky The Night Agent
         The Queen's Gambit The Shawshank Redemption Ukraine on Fire
                                                  Film Analysis


Scandal of Kinuko Iwamoto

吉岡一族、そして岩本絹子による東京女子医大私物化

岩本絹子(78) 佐賀県唐津市出身。江戸川区で産婦人科を開業。葛西産婦人科(江戸川区東葛西6-8-6   2008/08のインタビューでは穏やかである。なぜ現在の化け物のような存在になってしまったのだろう。彼女を狂わせたのは一体なにだろう。)である。なお岩本の住所は港区とされる。
 葛西産婦人科は事件に無関係ではなく、私物化事件全体に深く関係している。岩本に付き従って東京女子医大に入り込んだ一人は、葛西産婦人科の職員。多額の現金が葛西産婦人科で見つかっている。

 今回2025年1月14日に、背任容疑で元東京女子医大理事長の岩本絹子逮捕に至った事件は、東京女子医大の新宿のキャンパス建設をめぐり実態のない業務に対し、岩本が建築士(68)に大学に1億1700万あまり払わせ、そこから3700万を現金で還流させた容疑である。
 これとは別に足立区にの医療センターをめぐって、岩本は1億8000万あまりを同じ建築士に支払わせたので、ここからも還流があったと疑われている。
 現在のところ、この1級建築士の名前は明らかになっていない。2024年8月の第三者報告書は建築アドバイザーに流れた報酬を3億円余りとしている。

 岩本は姪(彩那 音 あやな おと 宝塚時代の芸名 なおその姉は彩輝なお あやき なお 元月組のトップスター)の主人が取締役を務める会社(ケネス&セルジオ 世田谷区下馬2-13-4)、つまり親族の会社にも大学から多額の資金を流出させた。秘書業務、経営統括業務支援などを名目に月額385万を流出させた。途中から甥を運転手にして月額66万の高給をさらに支払わせた。これらの姪や甥にとっては、やさしいおばさんになるのだろうが、世間的には親族の会社と大学に並外れた高給を支払う契約を結ばせ、大学の資金を流出させたことは公私混同といえる。
 また岩本はこうした形で自身に忠誠を誓う人々で身の回りを固めたのだろう。ケネス&セルジオは、岩本の犯罪を支え、東京女子医大に巣食った癌だったのではないか。
 2024年8月の第三者報告書はこの会社に流れた総額を3億8000万としている。
 これまでの家宅捜索で現金1億5000万, 金塊2キロみつかる(なお1キロの金塊は2025年1月14日の相場は1492万円、つまり約1500万円。2キロなら約3000万円の価値がある。)また別の日の捜査では現金5000万あまりみつかっている。

 今回の事件で私が、注目したのはまずはなぜこの程度のレベルの人がトップに立てたのかという、大学のガバナンスの在り方、また、大規模病院をもつ医療系大学のガバナンスの在り方、である。長期間このような人が君臨出来た理由は気になる。彼女の執行部を支えた旧学長などの罪は極めて深い。元をただすと創業一族の吉岡一族による大学私物化に遠因がある。まずは遠因となった、吉岡一族の経営への関与を徹底して排除することが必要ではないだろうか。

東京女子医大元理事長背任事件 NHK 2025/01/14

女帝岩本絹子の人物像 FNN 2025/01/13

2025/01/13   岩本絹子を背任容疑で逮捕

2024/12/06    東京女子医大 臨時理事会で清水治氏を新理事長に選任

2024/08/07  東京女子医大 理事会で岩本氏除く全員で岩本氏を理事長から解任  
2024/08/06    文部科学省 学長ら理事3人を呼び行政指導

2024/08/02    東京女子医大 岩本独裁体制を批判する第三者委員会報告を公表
                      要約版①

2024/07/02    東京女子医大教授有志が文部科学省高等教育局幹部に面会求め理事会への指導を要請

2023/06  至誠会 理事体制を一新

2023/04   至誠会 臨時社員総会で岩本氏を会長から解任

2023/03   警視庁が特別背任容疑で岩本の自宅他を捜索

女子医大の闇 内部資料入手 岩澤倫彦 文春オンライン2022/07/19

親族企業に1億超支出の公私混同 岩澤倫彦 文春オンライン2022/07/19

2019   岩本絹子が大学理事長就任 女子医大を私物化

     経営責任認めない吉岡一族の暴走 FACTA 2015/07
     経営責任認めない吉岡俊正理事長、岩本絹子副理事長

2014         至誠会代表理事であった岩本絹子が大学の副理事長に就任
      岩本は経営統括室を設置して不正を進めた。
      理事長は一族の吉岡俊正 岩本絹子の不正に歯止めかけず
      他方、吉岡は学長を解任して学長兼務し大学支配を強める 

2013         創業一族の吉岡俊正が理事長就任 

2010         創業一族の吉岡俊正が副理事長に就任 


Israel has no justification for killing innocent people

Why did Israeli shoot shirtless hostages carrying  a white flag, DW News
2023/12/17



Hostages were waving white flag when killed by Israeli troops,

WHAS11, 2023/12/17



Dozens Protest in Tel Aviv, after IDF solidiers accidentally kill 3 hostages,

Forbes 2023/12/16


 

Israeli forces mistakenly kill 3 hostages, CBS 2023/12/16


Flooding tunnels in Gaza will be 'disastrous', Al Jazeera English, 2023/12/13


UN general assembly votes over whelmingly in favour of humanitarian ceasefire in Gaza, Guardian, 2023/12/13


hostage killed during attemped rescue  MCNBC   2023/12/10


Palestine: Preventing  a Genocide in Gaza and a new 'Nakba', UN, 2023/11/21   

cf. Quick Facts: The palestinian Nakba, IMEU   2023/04/05

Calls for immediate ceasefire in Gaza, Enlarged Knowledge com 2023/11/12

Isralel has no justification for killing innocent people in Gaza, SBS 2023/11/12


M Muhannad Ayyash, A genocide is under way in Palestine, AlJazeera, 2023/11/02

Israel-Paletine war: Israel plans to flood underground tunnels where hostages  may be held, WION,  2023/10/25


 Air strike on Gaza hospital, Enlarged Knowledge com 2023/10/17

注目の投稿

Classics of Economics REFERENCE: 1848-2023

The Young Karl Marx (2018) trailer Classics of Economics  REFERENCE: 1848-2023 John Locke 1634-1704     John Locke (2) David Hume 1711-1776 ...

人気の投稿