履歴効果 hysteresis


  hysteresis ヒステリシス 履歴効果 ある経済イベントの衝撃が、その後、情況が変わっても、履歴として経済効果を与え続けること。たとえば、深刻な経済不況の後、景気が回復しても、失業率がなかなか回復しないといった状況のとき、ヒステリシス(正しい発音はヒステリーシス)、履歴効果が働いているからだと指摘される。ではその理由はどこにあるだろうか。
 ヒステリーシスの議論では、失業が長引くと、①失業した人の技能が低下することで、あるいは②勤労意欲が低下することで、その後、景気が回復しても、失業率の回復がなかなか始まらない(あるいは生産性が回復しない)とする。この議論は、不況の長期化を説明するとき、不況という打撃により、①失業により人的資本が技能が低下するなど毀損する、②低い賃金に生活を合わせ賃上げ要求が出にくくなる、③人々が消費に抑制的になり消費拡大が生じなくなる、④企業が研究開発投資や設備投資の消極的になる、などから潜在的成長率自体が低下し不況が長期化するのは、まさに不況という打撃によるヒステリーシスが、働いているからだとする。
 よく似たニュアンスの言葉に経路依存性path dependency)がある。こちらは、制度や仕組みについては過去にそれを採用する決定が行われたわけだが、情況が変わっても、過去に出来た制度や仕組みがなかなか変更されないときに、使う。すなわち、新たな制度に変更しようとするとき、慣れている現在の制度や仕組みをどうするかという議論になるが、それはまさに経路依存性をどうするか、が問われていることになる。ヒステリーシスが、何か強い衝撃があと迄続く効果を及ぼすことを指しているのに対し、一度確立した制度や仕組みが、なかなか変わらないことを指している。

    autism   Baumol's cost disease   bullshit job capital flight 
      China as a dystopia  choke point   coffee and urinary stone
  dementia   digital Leninism   hysteresis inclusive marketing 
  interstitial pneumonia  job type employment  
  market Leninism   menopause  osteoarthritis  peer pressure
      presbyopia  schizophrenia subarachnoid hemorrhage 
  US-China decoupling Z-generation  

ジョブ型雇用 job type employment



 job type employment  ジョブ型雇用 職種別雇用 雇用の在り方の問題として、従来、日本企業が行ってきたのはメムバーシップ型雇用(メムバーシップ型membership type employment)であって、これをジョブ型雇用に切り替えてゆくべきだとの議論が盛んである。従来、日本企業は具体的な仕事は、採用後、企業の判断で割り当てるとして、特定の職種を示して採用することがむしろ例外的であった。採用後、仕事を割り振ったあと、一定年数の仕事の経験値がある者の中から、管理職として適性のあるものが、選抜された。 つまり日本企業は、企業(会社)のメムバーにするかどうかが、採用の判断基準で、特定の職種で募集することは例外的だった。
 逆に言えば、最初の職種とその後の職種に連続性は担保されてなかった。ただ企業は、採用した人の雇用を維持しようとし、また採用された人も、定年退職までその企業にとどまることが多かった。こうした雇用を終身雇用(lifetime employment)といい、賃金体系は年功を重視した年功賃金構造(senority wage structure)とされることが多かった。こうしたメムバーシップ型雇用が日本で長く続いたのには、企業側、被用者側双方に雇用を安定させ長期雇用することにメリットがあったからだと考えられる。企業側からすればこのシステムは、企業への忠誠心の高い人の雇用につながった。被用者側にとっては雇用が安定し、若年時の低賃金がやがて年功による高賃金で報われることは魅力だった。
 しかし活力のある流動的な社会を作り出すには、雇用自体を流動化する必要があり、そのためには雇用の在り方を、ジョブ型雇用に切り替えてゆくべきだと主張されるようになった。コロナ下で多くの企業でテレワーク(work from home; telework)が進んだ結果、仕事の評価において、「勤務時間」よりも達成できた成果がより重視されるようになったことも関係がある。各職種で成果を達成できる人物の採用が必至となり、職種ごとに適性や能力の要件が厳格化した。採用後、すぐに成果を出せる人を採用する傾向が強まることになった。
 他方で、人の仕事を多くがAI(人工知能)に置き換えられるという議論も盛んである。次の時代の専門職は、このAIを使いこなすことが必須になるのではないか。

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同調圧力 peer pressure


 

peer pressure  同調圧力 多数の意見や行動に合わせるように、暗黙に強制すること。peerは同クラスの仲間という意味。意見や行動を一致させようと暗黙の力がかかれば、それは同調圧力。                    
 他方で、意見・行動において周囲に合わせようという意識が働くことを同調性バイアス(synchrony bias)と呼んでいる。集団の中での意見・行動においては、同調圧力がかかっている。そのもとで、同調性バイアスの心理もあって、人は集団内多数派と異なる意見・行動をとりにくいとされる。
 社会心理学では、自分の判断より社会で多数の人の判断を正しいと信じて行動することを、社会的証明の原理social proof)という。
 多くの人が購入しているものを購入しようとするのは、ほかの人の判断が正しいとして従っている(=social proof)わけだが、その方が安心できる、流行に乗りたいと言った心理も働いている。マーケティングではこれをバンドワゴン効果band-wagon effect)と呼ぶ。band-wagonとは、楽隊を載せて先頭を走る車のこと。人々がそれを追いかける様子を、この現象に重ねた言葉である。

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